理事長のご挨拶
- 医療法人社団尽誠会 理事長
野村病院グループCEO
野村祐介
ご挨拶
野村病院のウェブサイトを開いて頂き、ありがとうございます。
野村病院は、昭和42年(1967年)10月1日の開院以来、先々代の野村幸男及び先代の野村正幸とともに慢性期以降の患者・利用者の人生を支えることを病院理念として外来及び入院診療を行ってまいりました。
1)理事長である私について ~急性期と慢性期を経験して~
私は医師として、循環器内科・消化器内科の領域で診療経験を積み、20年以上にわたり急性期病院に勤務してまいりました。
その後、先々代および先代の急逝により、野村病院を引き継ぐこととなり、一定期間は熊谷総合病院(週4日勤務)と野村病院(週2日勤務)において、診療及び経営に携わりました。
この間、救急医療・急性期医療、地域包括ケア・回復期医療、療養病棟での慢性期医療、さらには介護医療院と、医療と介護の幅広いフィールドに関わることで、医療・介護サービスを持続的に提供するために必要な課題や仕組みを体感してまいりました。
また、熊谷総合病院では、経営母体であった埼玉県厚生連の破産やM&Aによる経営移行といった貴重な経験もあり、組織としての柔軟な対応力や、地域ニーズに即した医療の提供体制の重要性を学ぶ機会となりました。日々の診療では、消化器内視鏡医として患者様の苦痛軽減と安全な検査・治療に取り組みつつ、患者様やご家族の生活の質を高められるよう努めてまいりました。その中で、より多くの患者様と向き合える環境づくりに貢献すべく、野村病院での業務に注力する必要性を感じるようになりました。
こうした経緯を経て、2024年の「トリプル改定(診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の同時改定)」を一つの契機として、現在は野村病院の理事長職に専念し、地域に根ざした医療・介護の体制強化に取り組んでおります。
2)VUCA時代における病院の歩み ~3ステップによる病院改革~
私は平成24年(2012年)に野村病院の理事長に就任いたしました。当時、病院は経営・組織体制・サービス面などで多くの課題を抱えており、理想とする医療・介護体制には至っていない状況でした。そこで、段階的に組織改革に取り組む必要があると考え、「3ステップによる病院改革」を計画的に進めてまいりました。
第1ステップ(2012年~)
まずは医療機能や体制を再構築し、基本的な医療提供体制を整えることで、地域の皆様に信頼される「平均的な病院」を目指しました。
第2ステップ(2016年~)
慢性期医療を担う病院としての役割を再認識し、療養病棟や介護医療院を通じて安定的な運営と機能強化を図ってきました。当時は、地域に必要とされる存在であり続けるため、時代の変化を見据えながら「慢性期医療の現場で生き残る病院」を目指す意志のもとで取り組みを進めておりました。
第3ステップ(2021年~)
「地域の皆様や医療従事者から信頼され、安心して選んでいただける病院」を目指し、多職種が連携するチーム医療や働きやすい職場づくりに取り組んでいます。
昨今、医療や介護を取り巻く環境は、変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)を伴う「VUCA時代」と言われています。
こうした社会環境に対応するため、当院では急性期医療で培ったノウハウも取り入れながら、慢性期医療の現場でも質の高いケアを提供できるよう努力しています。
また、富山県SDGs宣言のもと、当院は「すべての人に健康と福祉を」「住み続けられるまちづくりを」「人や国の不平等をなくそう」という3つの目標を掲げています。
これらの実現を図るため、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に配慮した ESG経営 にも積極的に取り組んでいます。今後も持続可能な医療・介護サービスを地域に提供していけるよう、継続的な改革と環境適応に努めてまいります。
3)地域とともに歩む病院づくり ~時代のニーズに応える医療提供体制を目指して~
地域医療における役割を果たしていくため、当院では「すべての人に健康と福祉を」というSDGsの目標を掲げ、地域ニーズに即した医療提供体制の整備に取り組んでおります。
平成17年(2005年)には、病床の全室を室料差額なしの完全個室化とし、プライバシー保護と感染対策の両立を図った療養環境を整備しました。
当院では、人工呼吸器や気管切開により医療的管理が必要な患者様の受け入れに対応しております。また、医療機関との連携のもと、他県からのご紹介をいただくケースもございます。
超高齢社会の進行に伴い、経口摂取や経腸栄養が難しい患者様が増えている現状に対し、中心静脈栄養(TPN)が必要な場合もあります。当院では、中心静脈カテーテルに代わる方法として、感染対策と穿刺時の安全性に配慮した末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)を平成29年(2017年)より導入し、必要に応じて超音波ガイド下穿刺法を併用しています。これにより、より安全性に配慮した治療の選択肢を提供できるよう努めております。
また、摂食嚥下サポートチーム(SST)によるカンファレンスや嚥下内視鏡検査(VE)を導入し、摂食・嚥下機能が低下した患者様に対して嚥下機能評価や摂食機能療法などの支援も行っております。こうした取り組みは、医師・看護師・リハビリスタッフなど多職種連携による支援体制のもと行われています。
さらに、患者様に対しては、リハビリテーションや入浴支援、排尿自立支援チームの活動など、生活機能の維持・向上に向けた支援にも取り組んでおります。医療的ケアとともに、尊厳を大切にした生活の質の確保を目指しています。
医療のみならず、介護の面でも地域ニーズに応える体制整備を進めており、介護医療院・居宅介護支援事業所・訪問介護ステーションの運営も行っております。
また、「住み続けられるまちづくりを」という理念のもと、大規模災害等に備えたBCP(事業継続計画)を策定し、万が一の際にもサービス提供が継続できる体制の構築に取り組んでおります。
4)多様な人材が活躍できる職場づくり ~働きやすさを追求する取り組み~
当院では、「人や国の不平等をなくそう」というSDGsの理念を踏まえ、さまざまな背景をもつ医療従事者が安心して働ける職場環境の整備に努めています。
①ウェルビーイングの実現を目指して
持続可能な医療・介護の提供体制を支えるため、「残業ゼロ」や「あらゆるハラスメントを許さない職場づくり」をキーワードに、ウェルビーイング経営を推進しています。
働きやすい職場環境には業務効率も重要であるとの考えから、以下のような業務支援機器等を導入しています。
平成30年(2018年):「SOMATOM go」マルチスライスCT(タブレット操作に対応)
令和2年(2020年):生体情報モニター「WEP-1200」導入(医療必要度の高まりに対応)
令和2年(2020年):とろみ自動調理サーバー導入(職員負担軽減・安全な食事提供に向けて)
令和3年(2021年):見守り支援システム「眠りSCAN」を介護医療院全室(100室)に導入
②医師の働き方改革とチーム医療体制
医師の勤務体制については、完全主治医制ではなく、複数主治医制および当直医制を採用し、平日日中は複数医師による対応、夜間・休日は宿日直許可を受けた当直医が対応する体制を整えています。医療の質と医師の負担軽減の両立を図るものです。
また、事務職を含む全職員の業務効率化を目的に、紙媒体からデジタル化への移行も進めており、チームの一員としての役割意識と働きやすさの向上を図っています。
③働く人を支える人事制度とライフステージ支援
令和4年度(2022年度)には、新たな人事評価制度を導入し、スタッフのモチベーション向上に向けた仕組みづくりを行いました。さらに、60歳から65歳へ定年年齢の延長と継続雇用制度により、シニアスタッフの活躍推進にも取り組んでいます。
スタッフ一人ひとりの多様性を尊重する文化が根づいており、たとえばウィンタースポーツの趣味と両立する看護師の夏季限定勤務など、多様な働き方にも柔軟に対応しています。特定看護師(PICCの挿入など)や、認定看護師・専門看護師・診療看護師(NP)など、専門性を持つ看護職の受け入れ体制も整備しています。
また、子育てと仕事の両立支援にも注力しており、厚生労働省が推進する「イクメンプロジェクト」に賛同。男性の育児休業取得実績があり、「イクメン企業宣言」および「イクボス宣言」を令和5年(2023年)4月に行いました。
当院の職場環境や組織運営における取り組みが評価され、株式会社JobRainbowが主催する「D&I AWARD 2023」において「アドバンス」に、「D&I AWARD 2024」において「ベストワークプレイス」に認定されました。なお、これらは職員の多様性や働きやすさに関する取り組みを評価するものであり、診療内容や治療効果を示すものではありません。
④「DEIB」の推進へ ~働く人が誇れる職場へ~
令和6年(2024年)からは、これまでのダイバーシティ&インクルージョン(D&I)に加え、エクイティ(公正性)の視点も取り入れた「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DEI)」を推進し、さらにビロンギング(帰属意識:Belonging)を重視した「DEIB」の実現を目指しています。
「この病院で働いていてよかった」「働き続けたい」と思える職場づくりを進め、誰もが自分らしく、やりがいをもって活躍できる環境整備に取り組んでまいります。
5)デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進と次世代に向けた病院づくり
当院はこれまで、多くの社会的変化や医療環境の課題に直面しながらも、柔軟に対応を重ねてまいりました。そうした過程で、病院としてのレジリエンス(回復力)を高めることができたと考えています。
今後は、新興感染症・再興感染症などの感染症対策をはじめ、少子高齢化や生産年齢人口の減少といった社会的変化にも対応し続ける必要があります。これらの課題に対し、これまで培ってきた対応力を生かしながら、より柔軟かつ持続可能な体制づくりを進めてまいります。
当院では今後、「医療・介護における新たな取り組み」と「職場環境における新たな挑戦」を両立させることによって、将来を見据えた病院・施設の在り方の検討と価値の創出を進めたいと考えています。
そのための重要な基盤の一つが、デジタルトランスフォーメーション(DX)です。当院ではこれまで、ICT・ロボット・医療介護デバイスの導入など、医療・介護現場のデジタル化を積極的に進めてまいりました。
こうした取り組みにより、従来の業務効率向上や医療安全対策に加え、今後の医療・介護の変化にも対応可能な環境整備を図っています。
これからも、地域の皆様に信頼される医療・介護サービスの提供を目指し、次の50年に向けた持続可能な病院づくり・施設づくりに取り組んでまいります。
引き続き、皆様のご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
略歴
平成13年(2001年) | 金沢医科大学 医学部卒業 金沢医科大学 循環器内科入局 |
平成16年(2004年) | 先端医学薬学研究センター 臨床研究開発部研究員 |
平成17年(2005年) | 石川医療技術専門学校 循環器内科非常勤講師 |
平成18年(2006年) | 金沢医科大学大学院 内科学Ⅰ修了(医学博士) 金沢医科大学 循環器内科 医員 |
平成19年(2007年) | 金沢医科大学 循環器内科 助教 金沢医科大学附属看護専門学校 循環器内科非常勤講師 |
平成21年(2009年) | JA長野厚生連 佐久総合病院 胃腸科 |
平成24年(2012年) | JA埼玉県厚生連 熊谷総合病院 消化器内科 医療法人社団尽誠会 理事長就任 |
平成25年(2013年) | 富山大学附属病院 第三内科 医員 富山県済生会富山病院 消化器内科 |
平成26年(2014年) | JA埼玉県厚生連 熊谷総合病院 消化器内科 |
平成28年(2016年) | 医療法人 熊谷総合病院 消化器内科 |
令和 3年 (2021年) | 医療法人 熊谷総合病院 副医局長 |
令和 4年 (2022年) | 医療法人 熊谷総合病院 医局長 |
令和 6年 (2024年) | 医療法人社団尽誠会 野村病院 医療法人 熊谷総合病院 内視鏡センター非常勤医師 |
学会認定専門医等
日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
日本循環器学会認定循環器専門医
日本消化器病学会認定消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医
日本消化管学会認定胃腸科認定医・専門医
日本消化管学会便通マネージメントドクター
日本老年医学会認定老年科専門医・指導医
日本医師会認定産業医
日本医師会認定健康スポーツ医
日本スポーツ協会公認スポーツドクター
日本心臓リハビリテーション学会認定心臓リハビリテーション指導士
難病指定医
認知症サポート医
がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会 修了
日本老年医学会認定高齢者医療研修会(総合機能評価加算に係る研修) 修了
日本臨床栄養代謝学会TNT(Total Nutrition Therapy)研修会 修了
嚥下機能評価研修会(PDN VEセミナー) 修了
下部尿路機能障害の治療とケア研修会(排尿自立支援加算・外来排尿自立指導料該当研修) 修了
フェントス®テープ適正使用e-learning 修了
医師の臨床研修に係る指導医講習会 修了
厚生労働省指定オンライン診療研修 修了
富山県慢性期医療協会副会長
富山市介護認定審査会委員
WEB掲載記事
※下線部をクリックすると外部リンク先のウェブページへ移動します(下記記事は外部企業による取材・企画に基づくものであり、特定の商品・サービスの推奨を目的としたものではありません)
「人を尊重する経営」の考え方を軸に病院運営を行っておりその取り組みを2025年4月に対外的に発表しました
2025年4月「DIVERSITY GUEST TALK1」において当院のDE&I推進活動の事例を発表しました
2025年4月『DIVERSITY GUEST TALK2』にて年齢・性別・職種にとらわれず誰もが活躍できる職場づくりに向けた当院の取り組みを発表しました
2025年4月『DIVERSITY GUEST TALK3』にて広報を活用した慢性期医療のイメージ刷新に向けた当院の取り組みを発表しました
2025年4月の『DIVERSITY GUEST TALK4』にて多様な人材が活躍できる組織づくりに向けた当院の取り組みを発表しました
2025年4月の『DIVERSITY GUEST TALK5』にて、多様な視点を取り入れた経営改革に関する当院の取り組みを発表しました
2025年3月のKNB WEBにて介護現場にインカムを導入しICT化を推進することでサービスの質向上を目指す取り組みを発表しました
社会問題化しているペイハラに対する自治体や病院の対策および専門家の病院側対応の4原則を参考に取り組んでいます
2024年11月に公開されたSPECIAL事例インタビューにて、慢性期医療に関する取り組みや今後の方向性が掲載されました
患者本位の医療を目指し地域の皆様や医療従事者との信頼関係を大切にした病院づくりに取り組んでいます
広報活動を通じて慢性期医療の理解促進に取り組み固定概念の見直しを目指しています
2024年6月の病院広報アワード2024において野村病院が最終選考に進みました
心のケアや認知症予防を目的にチワワやトイプードルなど複数の犬が参加するドッグセラピーを実施しています
健康診断の再受診にオンライン診療を活用する取り組みを進めています
当院では「老人病院」から「治療を行う慢性期病院」へのイメージ転換に向けた取り組みを行っています
働き方改革により応募者の増加や離職率の改善に取り組んでいます
当院では慢性期医療のイメージ刷新を目指し、医療・介護の現場でさまざまな取り組みを進めています
排泄予測支援の一環としてDFreeを導入し職員による継続的な活用と運用改善を行っています
女性スタッフの働きやすさ向上のため「女性ヘルスケア応援自販機」を導入しています
環境への配慮と健康・福祉の両立を目指す取り組みを進めています
リハビリテーション、口腔ケア、栄養管理を連携して行う取り組みを多職種チーム医療と働き方改革に伴うタスクシフトの実践例として進めています
当院の取り組みが「明日の高齢者医療を拓く 2024年版」に掲載されました
病院改革により平均残業時間が減少し医療従事者の声をもとに改善に取り組んでいます
SDGs未来都市TOYAMAの取り組みとして食品ロス削減や職場環境の改善に向けた取り組みを進めています
健康経営の推進に向けた取り組みを進めています
ロボット化を見据えた給食体制を導入しスタッフの能力を活かす取り組みを進めています
慢性期病床における中心静脈栄養の取り組みとして血管アクセスの工夫や栄養管理の方法を進めています